まだ30半ばという時に、わたしの頭部は薄くなりはじめてしまいました。
食事のバランスに気をつけたり、育毛剤を使ったりと、いろいろ工夫を凝らしましたが、わたしの脱毛はその勢いを弱めませんでした。
そのうち、会社の同僚が冷やかしはじめます。
『そろそろ本気で結婚を考えないと、そのうち誰にも相手にされない頭になるぞ』
などと、人の気も知らないで言いたい放題です。
『結婚は髪の毛の量でするもんじゃない!』
と反発はしてみるものの、同僚の言葉はわたしの胸にグサリと突き刺さったまま、抜ける気配すらありません。
その時わたしは考えました。
『よし、中途半端がいけないんだ、いさぎよくみんな失くしてしまえばいいんだ』
そうです、わたしは丸坊主になる覚悟を決めたのでした。
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さて、話を戻しましょう。
しかしその決意を会社で宣言した時に、今まで冷やかしていた同僚たちが、一斉にわたしの決意に異を唱えたのでした。
その頃のわたしの仕事は営業でした。
同僚が言うには、丸坊主なんかにした日には、客がわたしに寄り付かなくなると言うのです。
客が寄り付かなければ営業成績も下がり、ボーナスの査定にも響いてきます。
わたしはそこで気がつきました。
わたしは脱毛に負けていたのです。
負けていたからこそ、自分の仕事のことも考えないで、無茶な選択をして、自分を美化しようと考えていたのですね。
あれから10年、わたしの頭部に残る髪の毛はかなり少なくなりました。
しかしもうわたしはジタバタしません。
おもしろいことに、髪の毛の量が減るに従って、わたしの営業成績は上がって行ったのでした。
それがなぜなのか、わたしは今も考えています。
3年前に所帯を持った、最愛の妻に励まされながら。
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